不育症の治療不育症についてご説明します。

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不育症の治療

不育症とは、妊娠は成立するものの流早産を繰り返すことをいいます。
流産は決して稀ではありません。複数回の流産の経験がある方は、不育症の検査、治療をしておく必要があるでしょう。

流産は決して稀ではありません。すべての妊娠の15~20%は流産で終わってしまいます。
したがって、反復して3回流産になってしまう方も100人に2~3人程度存在します。
この3回の流産の経験がある女性が次の妊娠でも流産する危険性は50%となってしまいます。
このことより、複数回の流産の経験のある方は、不育症の検査、治療をする必要があります。
不育症の治療により、流産を防止して出産に至る方は大体80%程度です。

反復して2回の流産の経験があり、所得が730万以下の方には、2022年現在、10万円の不育症助成金があります。

不育症の治療の検査

流産歴が1回までの方

基本的に医学的には検査、治療の対象にはなりません。
ただし、流産に対する不安が強く、検査を希望される場合には検査を致します。

過去の流産歴が2回までの方

流産の原因は、母体側要因と胎児側要因に大別されます。
初回流産の場合、多くは胎児の染色体異常が原因であるため不育症の検査、治療の対象とはなりません。
ご希望のある場合には検査を行います。

連続3回以上の流産の方(習慣流産)

基本的にはすべての項目を調べる必要があります。
年齢、不妊治療歴、患者様のご希望等により相談して必要な検査を行います。

不育症の主な原因

抗リン脂質症候群

抗リン脂質抗体の以上高値により、血栓症、血小板減少などを起こす結果、流産を引き起こし、不育症になります。
採血により診断できます。血液が固まりやすくなり、胎盤などの微小な血管に血栓が形成される結果、流産を起こしやすくなり、不育症となります。

検査項目

ループスアンチコアグラント(dRVVT)、抗カルジオリピンβ2GP1抗体、抗カルジオリピンIgG抗体、
抗カルジオリピンIgM抗体、抗フォスファチジルエタノラミン(PE) 抗体IgG、
抗フォスファチジルエタノラミン(PE) 抗体IgM、抗プロトロンビン抗体

凝固系の異常

プロテインC・プロテインS、凝固第12因子などの異常では、血液が固まりやすく(血栓ができやすく)、胎盤の血液のめぐりが悪くなり不育症となります。

検査項目

プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)
第XII凝固因子、プロテインS抗原量、プロテインS活性、プロテインC抗原量、アンチトロンビンIII(AT-III)

自己抗体

自己抗体とは、自分の体の細胞を自分の抗体で攻撃してしまう状態です。
本来抗体は細菌などの異物に対して自分を守るために攻撃を行うものですが、自己抗体陽性のケースでは自分の細胞に対して攻撃してしまい、不育症を引き起こすと考えられます。

検査項目

抗核抗体、抗DNA抗体、抗SS-A/RO抗体、C3 C4 血清補体価(CH50)

ホルモンの異常

ホルモンの問題は、不妊症、不育症のチェックでよく発見されます。
内科的な治療などで十分にコントロールされていれば特に問題ありませんが、時として不育症を引き起こします。

高プロラクチン血症

母乳分泌、妊娠維持に関与していますが、非常に高値の場合、不育症となります。

検査項目

乳腺刺激ホルモン(PRL)

黄体機能不全

着床、妊娠継続を維持する黄体ホルモンの不足により着床が維持できなくなります。不育症のひとつです。

検査項目

黄体ホルモン(P4)

甲状腺機能異常

甲状腺ホルモンの問題で、流産が多くなり、不育症となります。
専門の医療機関を紹介いたします。

糖尿病

空腹時血糖値を測定します。
高血糖は流産、胎児奇形などの頻度が高くなります。
専門の医療機関を紹介いたします。

子宮の形の異常

子宮奇形があれば必ずしも不育症にはなりません。
子宮の内側にできる子宮筋腫がある場合、子宮自体が変形している場合は、不育症の原因となり、手術が必要です。

染色体異常

胎児の染色体異常は女性の年齢が上がると上昇します。
高齢出産では代表的な染色体異常であるダウン症が増加します。
一般的に胎児の染色体異常は受精後に起こるため、繰り返すことは稀です。
しかし、ご夫婦のどちらかが先天的に持っていた染色体異常を既に持っているケースも少数例ですが存在します。
これはご夫婦の、染色体検査を行って初めて分かるものです。
このような場合、不育症となります。

原因不明

約4割が原因不明の不育症です。

不育症の治療法

抗リン脂質症候群
アスピリン療法

排卵後からバッファリンを1日1錠内服し始めます。
妊娠判定陽性であればそのまま継続して内服します。
妊娠せずに月経が開始した場合は内服を中止します。

へパリン療法

妊娠判定陽性時よりヘパリンを1日2回皮下注射します。
患者様の病歴、検査結果より最長妊娠35週まで継続します。
注射の指導により、自己注射して頂きます。

副作用について

バッファリン、ヘパリン療法は凝固系を阻害しますから、出血しやすくなります。

治療成績

抗リン脂質抗体症候群では何も治療しなかった場合、次回の妊娠で流産してしまう可能性は大体8割ですが、バッファリン単独療法で4割程度、バッファリンとヘパリンを併用すると不育症を8割程度予防できます。

凝固系の異常
アスピリン内服療法

排卵後からバッファリンを1日1錠内服し始めます。
妊娠判定陽性であればそのまま継続して内服します。
妊娠せずに月経が開始した場合は内服を中止します。

自己抗体
アスピリン内服療法

排卵後からバッファリンを1日1錠内服し始めます。
妊娠判定陽性であればそのまま継続して内服します。
妊娠せずに月経が開始した場合は内服を中止します。

内分泌代謝異常
高プロラクチン血症

プロラクチンの分泌を抑える薬を内服します。

黄体機能不全

黄体ホルモン内服、注射、クロミッド、黄体ホルモン注射などで黄体ホルモンを上昇させます。

甲状腺機能異常

甲状腺薬、抗甲状腺薬を処方して、コントロールします。
専門の医療機関に紹介いたします。

糖尿病

食事療法、内服、注射療法などを行います。
専門の医療機関に紹介いたします。

子宮の形の異常

超音波検査、ソノヒステログラフィー、子宮鏡などにより子宮の形態を観察して、必要があれば形成術を行います。

染色体異常

染色体の異常の場合、根本的な治療はありません。
しかし、日本産婦人科学会のガイドラインの適応であれば、着床前診断をする事もあります。

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