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男性も早めの検査を…高校保健で「加齢リスク」説明
リクルートジョブズ(東京)の山口順通さん(40)は3年前、大きな衝撃を受けた。「スマートフォンの画面に映るはずの精子が見えない……」
当時勤めていたグループ会社のリクルートライフスタイル(東京)が開発した、スマホのアプリを使って精子の状態を自分でチェックするキット「Seem(シーム)」を社内モニターとして利用した結果だ。
それまで自身の精子など意識したことはなかった山口さんは、すぐに男性不妊の専門医を受診。無精子症と診断され、精巣組織から精子を回収する手術を受けた。その精子を用いた不妊治療で妻(31)が妊娠したのはシーム使用の半年後のことだ。
世界保健機関(WHO)の調査によると、不妊の原因は女性単独41%、男性単独24%、男女両方24%で、原因の約半分は男性にある。だが、リクルートライフスタイルの2018年の調査では、子どもが欲しい男性で、医療機関で精液検査を受けたことがあるのは13%だった。受けていない理由では、「自分に問題があると思わない」が最多。「不妊は女性の問題」という先入観が感じられる。
長年患者を診てきた「はらメディカルクリニック」(東京都渋谷区)院長の原利夫さんは、治療についても男性の方が消極的だという。「生理とずっと付き合い、来院に抵抗が少ない女性と違い、男性は精子が少なかったり性行為ができなかったりすると沽券にかかわると感じて、治療を拒否する人もいる」
男性の意識を少しでも変えようと、ベンチャー企業のヘルスアンドライツ(東京)代表、吉川雄司さん(28)は今月26日、男性限定の「大人の性教育」講座を開催した。
不妊に詳しい医師と連携し、精子の状態などを楽しく学ぶ内容。妊活前の20代の参加者で盛り上がり、手応えを感じた吉川さんは「正しい知識を得て人生設計をしてほしい」と、今後も講座を続ける方針だ。
知識の欠如は男性に限らない。「加齢で卵子の老化が進むと妊娠しにくくなるなんて、学校で習わなかったよね」。こんな嘆き節が40代以上の患者から聞こえてくる。もっと早く知っていれば、との後悔が絶えない。
啓発の動きもある。文部科学省は15年、高校生向けの保健の副読本で、不妊について初めて記載。最新版では、男女とも年齢が上がるほど妊娠する確率が下がり、リスクが高まることを説明している。
不妊治療では、なかなか妊娠できないストレスや金銭面での悩み以外にも、まだまだ知られていない負担がある。例えば、血液検査の結果やエコー写真などの膨大なデータ管理に振り回されることだ。
不妊関連のサービスを手がけるライフサカス(東京)は、こうした負担を減らそうと、通院や支払いなどの記録を残せるアプリ「GoPRE(ゴープレ)」を10月以降に本格稼働させる。
代表の西部沙緒里さん(40)は不妊治療経験者で、「治療を始めると、気持ちがジェットコースターのように乱高下した」と言う。そのつらい思いから患者支援を決意し、仲間と起業した。
アプリのデータは夫婦での共有も可能だ。1児の母となった西部さんは「治療を巡るやり取りは、夫婦間でぎくしゃくしがち。円滑にするための助けとなれば」と話す。
治療を乗り越えるには、男女の協力と支え合いが不可欠だ。
出典:読売新聞