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卵子保存要望、実績の10倍 がん治療前、妊娠に備え 厚労省研究班が助成提言
不妊になる恐れがあるがん治療の前に、経済的な支援があれば将来の妊娠に備えて卵子の凍結保存を望む女性患者は、年間約2600人に上るとの推計を厚生労働省研究班(代表・聖マリアンナ医大の鈴木直(すずき・なお)教授)が26日までにまとめた。2015年にがん治療前の凍結保存が実施されたのは256件で、実績の10倍ほどの潜在的な希望者がいる可能性が示された。
卵子や受精卵の凍結保存は、初期費用に少なくとも20万~40万円かかる。全ての患者の保存に必要な費用は約8億8千万円と見込まれ、研究班は公的助成制度を設けるよう提言している。
がん治療では抗がん剤の投与や放射線治療の影響で妊娠が難しくなる場合があり、あらかじめ卵子や卵巣などを採取し凍結保存することが妊娠を目指す手段となっている。
研究班は、患者の統計から15~39歳の未婚のがん患者は年間約5150人と見積もった。全国で実施されている凍結保存の件数や、国が不妊治療への助成を始めたことで増えた件数を基に計算したところ、経済的に支障がなければ保存を希望する患者は2622人になると推計した。
研究班は費用の問題のほか、治療前に卵子の保存に関する十分な情報を得られなかったり、身近に実施可能な施設がなかったりした患者もいるとみている。卵子を凍結保存する施設は日本産科婦人科学会に登録しているが、14県には登録施設がないという。
鈴木教授は「治療前に凍結保存する件数は徐々に増えている。妊娠を希望する女性が機会を失うことがないよう、さらに環境を整えることが重要だ」と話している。
※卵子の凍結保存
排卵誘発剤などで卵巣を刺激し、採取した卵子を液体窒素の中で凍らせて保存する。解凍すれば体外受精が可能で、受精卵を子宮に戻し妊娠、出産を目指すことができる。晩婚化が進む中で、健康な女性が将来の妊娠に備えて若い時に卵子を凍結保存する動きもあるが、日本産科婦人科学会の専門委員会は「妊娠、出産は適切な年齢で行われることが望ましい」として、健康な女性には基本的には推奨しないとしている。
出典:共同通信社