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妊活語り始めた夫たち 交流会や体験談出版も 男のプライド超えて 「暮らしアイ」
不妊治療について口をつぐんできた夫たちが声を上げ始めた。妻の妊娠・出産を目指す男性の妊活体験をまとめた本が反響を呼んだり、交流会が設けられたりするなど「男のプライド」を超えた動きが広がりつつある。
「こどもができないのは男として不適格といわれた気になって、治療のことを誰かに話す気にはなれなかった」。約7年の治療経験がある関東地方の男性(39)は語る。
「『大変なんだ』って目で見られたくない。同じような状況の人でないと切り出せない」。妻が妊娠した今も、ごく限られた人にしか治療のことを伝えられないでいる。
北陸地方に住む女性(40)は、11回目の受精卵移植後に初めて夫に精密検査を促した。「夫のプライドを傷つけるようで切り出せなかった」と女性。夫に不妊の原因があると分かり、手術を受けた。数カ月後に長女(3)を授かったが、今も不妊や治療をどう考えていたのか聞けずじまいだ。
「夫が誰かに相談したとも思えない。妊活は夫婦で取り組むものという認識が社会で共有されれば、男性も話しやすくなるでしょうけど」
不妊に悩む夫婦は1割とされる。国の不妊治療助成件数も年々増加し、2014年度は約15万2千件と、04年の約9倍だ。男性に原因があっても、大半の治療は女性中心で、男性が専門治療の場にたどり着いていない。
夫たちが悩んでいないわけではない。フリーライターの村橋(むらはし)ゴローさん(44)が、男性の体験談「俺たち妊活部」(主婦の友社)を昨年出版したところ「同じ思いの人がいたと知ってほっとした」という声が相次いだ。
村橋さんも体外受精で長男(2)を授かった。妊活中、同級生や仕事仲間に話すと「うちも」と大勢が打ち明けてくれた。だが、クリニックにいるのは女性ばかり。取材をすると、治療内容すら知らない夫が多くいる実態が浮かんだ。
一方で、落ち込む妻との関係に戸惑い、自身の不妊に悩んでも、はき出す機会がなく抱え込む姿も。一般的に治療費は体外受精で1回当たり40万~50万円程度と高額なため、かさむ費用に不安を覚えている人もいた。
村橋さんも、つらい治療に耐え「こどもを見るのがつらい」と訴える妻の姿に胸を痛めた。何度も壁にぶつかったが、情報を集め納得いくクリニック選びができた。「話して楽になりヒントをもらえることもある」とカミングアウトを勧める。
不妊に悩む人を支援するNPO法人「Fine」では、男性だけの意見交換の場を設け始めた。最初は緊張気味の人が多いが、次第に「落ち込む奥さんにどんな言葉を掛けているの?」「夫としてどうしたらいいかわからない、迷う」など、話が止まらなくなるという。
無料電話相談にも、最近は男性から相談が寄せられるようになった。「きっかけさえあれば男性も話したいはず」と松本亜樹子(まつもと・あきこ)理事長。ニーズに応えるよう治療経験のある男性のカウンセラーをもっと養成する考えだ。
※男性不妊
不妊の原因の半分は男性側にあるとされる。代表的な疾患の一つは精子の生産に支障が出る「精索静脈瘤(りゅう)」で、男性不妊の約4人に1人が該当するとみられる。中心となる治療は手術で、入院期間は日帰りから2泊3日程度。データ上は異常がないにもかかわらず、精子が不良のケースもあるという。現在は、国による治療費助成の対象に一部の男性不妊も含まれている。近年は、歌手のダイアモンド☆ユカイさんや、放送作家の鈴木おさむさんら著名人が自身の不妊や治療体験を公表、男性目線の”妊活”情報が公になる機会が増えた。
出典:共同通信社